「どれがいいですか?」と聞かれるたびに、正直困っていた
セミナーや相談の場で、毎回のように聞かれる質問があります。
「AIツール、結局どれを入れればいいですか?」
私自身、現時点で10種類のAIツールを契約して日常的に使っています。だからこそ、この質問にパッと答えるのが難しい。どのツールにも良いところがあって、使う場面が違う。「これ一択です」と言い切れたら楽なんですが、正直そう単純じゃないんです。
ただ、3ヶ月前の自分だったら迷わず「Google Workspaceにしましょう」と答えていました。今は少し状況が変わっています。その話は後ほど。
ここで1つ、データを共有させてください。中小企業のAI導入率は、調査によってまだ1〜2割程度と言われています。ただ、注目すべきは「導入した企業の多くが成果を実感している」という点です。
つまり「始めれば成果は出る」のに、「何から始めるか」で止まっている。私がいろいろな企業の相談を受けてきた中でも、ツールが多すぎて選べないまま半年経ちました、というケースが本当に多いです。
10種類のAIツールを使って見えた「選び方の基準」
私が契約しているツールを並べてみます。
- ChatGPT
- Google Workspace(Gemini)
- Claude
- Genspark
- Manus
- Lovart
- Aqua Voice
- Notta
- Felo
- Canva
自分で言うのもナンですが、なかなかの数です。文章生成、リサーチ、音声文字起こし、画像生成、デザインと、カバーしている領域もバラバラ。毎月の合計コストを計算すると、ちょっとした出費になっています。
で、よく聞かれるのが「微妙だったツールはどれですか?」という質問。
これが意外と、ないんです。どれも自分の業務の中で明確な役割がある。ただし、それは私が「この作業にはこのツール」と目的を決めてから契約しているからです。「なんとなく話題だから入れてみた」という入り方だと、恐らくどのツールも微妙に感じると思います。
私も最初はそうでした。ChatGPTが話題になった頃、とりあえず契約して「すごいな」と思いつつ、具体的に何に使うかが決まっていなかった。結果、1ヶ月くらい雑談相手にしかなっていなかった時期があります。
私はセミナーで、AIのことを「超優秀だけど業界のことを何も知らない新卒社員」だと説明しています。あなたはその上司。何をしてほしいか、どういう前提で動いてほしいかを伝えないと、見当違いの仕事をしてくる。
ということで、ツール選びの基準はシンプルです。「何をしたいか」が先。ツールは後。この順番を間違えると、契約だけして使わないまま月額が引き落とされていく。これは間違いなくもったいない。
中小企業に勧めるなら、この2つの使い分け
「1つだけ教えてください」と言われたら、私はまずGoogle Workspaceを勧めます。理由は、既存業務との接続がとにかく楽だからです。
2025年3月から、GoogleのAI「Gemini」が全プランに追加料金なしで統合されました。これが大きい。Gmail、Googleドキュメント、スプレッドシート、スライド、それぞれの中でAIが使えるようになっています。
すでにGoogle Workspaceを使っている企業なら、追加コストゼロで始められる。コスト面でも比較してみると、Google Workspaceは月1,600円。ChatGPTのビジネスプランは月$25(約3,800円)、Microsoft Copilotは月4,497円です。最初の一歩としてのコストパフォーマンスでも、Google Workspaceに分があると考えています。(2026年1月の講演資料より)
新しいアプリを入れる必要も、社員に別のツールの使い方を教える必要もない。「まず試してみる」のハードルがぐっと下がりました。メールの下書き、ドキュメントの要約、スプレッドシートの関数作成、そういう日常業務の中でそのままAIが使えるのは、導入の第一歩として理にかなっています。
確かに、Google Workspaceだけで全部カバーできるかと言えば、そうでもない。だから、もう1つ挙げるならClaudeです。
Claudeは日本語の品質がかなり高くて、私が実際に使っていて一番助かっているのは長文処理です。30ページ超の資料を読み込ませて要点を抜き出したり、1時間の会議の議事録からネクストアクションだけ整理したり。入力データが外部学習に使われない設計なので、社内文書を扱うときの心理的ハードルが低いのも大きいです。ローカルのファイルを直接読み込ませて処理できるので、「このExcelファイルの中身を分析して」「このPDFの要約を作って」といった使い方が、特別な設定なしにできます。
で、結局どっちを選ぶかという話なんですが。
クラウド系の業務(メール、ドキュメント作成、表計算)が中心の企業はGoogle Workspace。ローカルファイルの処理や、長文の読解・作成が多い企業はClaude。
3ヶ月前ならGoogle一択と答えていましたが、Claudeの進化が目覚ましくて、今は「使い分け」が正解だと考えています。逆に言えば、この2つを押さえておけば、中小企業の日常業務で困る場面はかなり減るはずです。
ただ、どちらか1つだけと言われたら、やはりGoogle Workspaceを先に勧めます。理由はシンプルで、すでに使っているツールの中にAIが入ってくるので、「新しいことを始める」感覚が薄い。社員の抵抗感が少ないのは、導入初期においては間違いなく大きなアドバンテージです。
ツールより先に決めるべきこと
ただ、ツールの話をする前にもっと大事なことがあります。
安全安心な使い方の確立。これが最優先です。
仕事で使うんですから、顧客情報や社内の機密データをどう扱うか、どこまでAIに入力していいか、そのルールを先に決めておく必要があります。ツールを入れてから考えるのでは遅い。「便利だから」と何でも入力してしまって、後から問題になるケースは実際に起きています。
その上で、「面倒くさいこと」「困っていること」にAIを当て込んでいく。いきなり業務全体を変えようとしなくていいんです。小さく始めて、手応えを感じてから広げる。このステップが一番確実です。
最初の1週間でやることは、2つだけ。
1つ目は、安全ルールを決めること。AIに入力してよい情報の範囲、社外秘の扱い、出力結果のチェック体制。完璧なルールじゃなくていいので、まず「ここだけは守る」というラインを決めておく。
2つ目は、1つだけ業務で試すこと。議事録の要約でも、メールの下書きでも、何でもいい。1つだけ実際に使ってみる。そこで「お、これは楽になるな」という手応えを感じられたら、自然と次のステップが見えてきます。
よく「AIに仕事を奪われる」という話を聞きますが、私はセミナーでいつもこう伝えています。生成AIが仕事を奪うのではなく、生成AIを活用する他社が仕事を奪う。だからこそ、最初の一歩を早く踏み出すことに意味があります。
はじめの一歩 の記事はこちらにまとめています。
