「ちょっと触ったけど、結局使わなくなった」は普通のこと

セミナーで「ChatGPT、使ったことある人?」と聞くと、だいたい半分くらいの手が挙がります。ところが「今も仕事で使っている人?」と聞き直すと、手がぱたっと下がる。残るのは数人です。

この光景、この半年で10回以上見てきました。セミナーの参加者50人中、継続して使っているのはせいぜい5〜6人。「触ってはみたけど続かない」が、私の肌感覚では8割以上です。

ただ、これは「向いてない」とか「センスがない」という話ではないと考えています。続かないのには、ちゃんと理由がある。逆に言えば、その理由さえ分かれば対処のしようがあります。私自身、ChatGPTが出た当初は1ヶ月くらい雑談相手にしかなっていなかった時期があるのですが、だからこそ続かない気持ちはよく分かります。

セミナーで聞いた「続かない理由」ベスト3

この半年間、セミナーや個別相談で約50人の経営者・管理職に「なぜ続かなかったか」を聞いてきました。出てくる理由は、驚くほど共通しています。

理由1: 使い方のイメージが湧かない

これが一番多い。

「すごいのは分かる。でも自分の仕事でどう使うの?」という声です。ChatGPTのデモを見て「おお」と思うのですが、翌日デスクに戻ると何を入力すればいいか分からない。だから開かなくなる。

これは能力の問題ではなく、「接続の問題」です。AIの機能と自分の業務が頭の中でつながっていないだけ。つながれば使えるようになります。実際、セミナーで「こういう場面で使えますよ」と具体例を見せた瞬間に「それならうちでもできる」と表情が変わる方がたくさんいます。

理由2: セキュリティが心配

「会社の情報を入れて大丈夫なの?」で止まっているケースも多いです。

心配する気持ちは正しいです。とはいえ、心配のあまり「一切触らない」になってしまうと、それはそれでもったいない。顧客データや社内の機密情報をそのまま入力するのはリスクがあるのですが、だからこそ「何を入れていいか、何がダメか」のルールを先に決めておくことが大事です。

ChatGPTもClaudeも、有料プランではユーザーの入力データをAIの学習に使わない設定が用意されています。正しく怖がることが大事です。

実は「怖いから一切使わせない」にもリスクがあります。最近「シャドーAI」という言葉を聞くようになりました。従業員が会社に無断で個人のAIアカウントを業務に使ってしまう現象です。私が支援してきた企業でも、「禁止」にしたところほど、個人スマホでこっそり使っているケースが多かった。「禁止」は、かえって統制のきかない利用を生む可能性がある。

理由3: 期待した出力が出ない

「使ってみたけど、的外れな回答ばかりだった」という声。これはプロンプト(AIへの指示の出し方)の問題であることがほとんどです。

「議事録を作って」とだけ入力しても、AIには何の会議で、誰が参加して、何を決めたかの情報がない。的外れな回答が出るのは当然です。ただ、このプロンプトの書き方は、ちょっとしたコツを知るだけなのですが、ぐっと改善できます。

続く人がやっている「最初の使い方」

で、続いている人は何が違うのか。

共通しているのは、仕事の中で「これならイメージが湧く」という使い方を1つ見つけていることです。全部の業務をAI化しようとした人は、例外なく途中で止まっています。1つだけ。これがポイントです。

セミナーでは、この3つを入り口として紹介しています。

ExcelにAIを入れる

私がセミナーで一番反応がいいのが、ExcelのアドインでAIを動かすデモです。普段使っているExcelの中でAIが動くので、「これなら自分の仕事でも使える」と一番イメージが湧きやすい。

具体的には、ChatGPT for ExcelとClaude for Excelという2つのアドインがあります。どちらもExcelのサイドバーからAIに指示を出して、関数の作成、データ整理、分析の補助ができる。自然言語で「この列の合計を出して」「売上の推移をグラフにして」と頼めるので、関数を覚えていなくても使えます。

ChatGPT for ExcelはChatGPT Plus(月$20)以上で利用可能。Claude for ExcelはClaude Pro(月$20)以上が必要です。どちらも月$20からなので、導入のハードルは低い。

ちなみにMicrosoft純正のCopilot in Excelという選択肢もありますが、少なくとも個人版のCopilotに関しては、正直に言うとあまりおすすめできません。ChatGPT for ExcelやClaude for Excelと比べてExcelアドインとしての性能が見劣りする上に、OneDriveへの保存が必須など使い勝手にもクセがある。

Microsoft公式なのに、他社が出しているExcel用AIアドインのほうがよっぽど使いやすい。ここは実際に全部触った上での率直な感想です。だから私は、まずChatGPT for ExcelかClaude for Excelから入ることを勧めています。

議事録の生成

会議を録音して、AIで文字起こしして、要約する。この流れは、多くの人にとってイメージが湧きやすい使い方です。

「会議のたびに30分かけていた議事録が、5分で8割できる」と聞けば、試してみたくなりませんか。実際、私の周りでもここから入った人が一番続いています。NottaやChatGPTの音声機能など、文字起こしツールの選択肢も増えてきているので、始めやすい環境が整っています。

プロンプトの正しい使い方を知る

で、先ほどの「的外れな回答ばかり」という声なんですが、これは次の3つを知るだけで激減します。

  • AIに役割を与える(「あなたは営業部のアシスタントです」)
  • 情報を十分に渡す(背景、目的、条件を具体的に書く)
  • 一発で完璧な出力を狙わない(何度かやり取りして仕上げる)

で、私がセミナーで毎回紹介しているのが「深津式プロンプト」という型です。2023年にnote CXOの深津貴之氏が提唱した方法で、「命令・制約・入力・出力」の4要素を埋めるだけ。3年経った今でも有効で、初めてのプロンプトに最適です。

この3つを意識するだけで、ChatGPTの回答の質は間違いなく変わります。

まず1つだけ、仕事で使ってみる

「全部の業務をAI化しよう」は、ほぼ確実に失敗します。

やるべきことはシンプルです。自分の仕事の中で「面倒くさいこと」「困っていること」を1つだけ選んで、そこにAIを当ててみる。議事録でも、メールの下書きでも、データ整理でも、何でもいい。

私がこれまで支援してきた中でも、うまくいった企業に共通しているのは「身近な定型業務で小さく成功体験を積んだ」ことです。いきなり大きな変革を目指すのではなく、小さく始めて手応えを感じてから広げる。このステップが一番確実です。

そこで「お、これは」という手応えが出れば、自然と次に進めます😊 続かなかった方のほとんどは、最初の1つで手応えを感じる前にやめてしまっている。だから、最初の1つを見つけることに集中してみてください。


はじめの一歩 の記事はこちらにまとめています。