「怖い」と感じているなら、それは正しい

セミナーや相談の場で、必ずと言っていいほど出る質問があります。

「AIって、情報漏洩が怖くないですか?」

怖いです。私も最初はそうだったのですが、だからこそ断言します。この感覚は正しい。

セミナーでも個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月)を紹介するのですが、参加者の反応を見ると「やっぱりそうなんだ」と安心する方と「じゃあ使わないほうがいい」と固まる方に分かれます。行政機関が名指しで注意を促すくらい、リスクは現実のものです。

ただ、問題は「怖い」で止まってしまうことなんです。

「怖いから一切使わない」と決めた企業でも、実は従業員が個人のスマホでこっそりChatGPTを使っている。これを「シャドーAI」と呼びます。会社が禁止しても、便利なものは使われてしまう。私が支援してきた企業でも、禁止にしたところほどシャドーAIが広がっていました。その機会損失は、正直かなり大きいと感じています。

怖いから使わないのではなく、怖いから対策する。この切り替えが大事です。

で、対策と言っても、やることは3つだけ。順番にいきます。

ステップ1: AIの設定を変える

最初にやるべきことは、AIツールの設定確認です。

ChatGPTには「すべての人のためにモデルを改善する」という設定項目があります。これがオンになっていると、入力したデータがAIの学習に使われる可能性がある。オフにしてください。これだけで、入力データが学習に使われなくなります。

Claudeは有料プランなら、最初から入力データが学習に使われない設計になっています。Google Workspaceの企業版(Business Standard以上)も同様で、業務データが学習に使われることはありません。

ただし、ここで注意。Google Workspaceでも「個人版」のGoogleアカウントは話が別です。企業版と個人版ではセキュリティの仕組みが違うのですが、ここを混同している方が多い。

一番危ないのは、「無料の個人アカウント」で業務データを扱うこと。これは設定でどうにかなる問題ではないので、まずここを押さえておいてください。

ステップ2: 入力ルールを決める

設定を変えたら、次は「何を入力していいか」のルールを決めます。

私はセミナーで「入力情報の3段階分類」を紹介しています。

  • レベル1(公開情報): そのまま入力OK。プレスリリース、公開データ、ホームページに載っている情報など
  • レベル2(社内一般情報): 固有名詞を伏せて入力。議事録、業務メモ、社内の検討資料など
  • レベル3(機密情報): 入力禁止。顧客の個人情報、未公開の財務データ、契約書の具体的内容など

完璧なルールを作ろうとしなくて大丈夫です。「ここだけは守る」を3行で決める。それだけで十分なスタートラインに立てます。

とはいえ、グレーゾーンはあります。「この情報はレベル2かレベル3か」と迷う場面は出てくるのですが、迷えること自体がすでに進歩です。ルールがなければ迷いもなく、全部入力してしまうか、全部やめてしまうかの二択になる。迷える状態を作ること自体に意味があると考えています。

ステップ3: 企業向けプランに切り替える

で、最後のステップはお金の話です。

無料の個人アカウントと企業向けプランでは、セキュリティの仕組みがまったく違います。

Google Workspace Business Standardは月1,600円。これで、業務データが学習に使われない環境と、管理者によるID管理が手に入ります。ChatGPT Businessは月$25(約3,800円)で、同じく学習なしの環境が使えます。(2026年1月の講演資料より)

月1,600円で「情報漏洩の不安」がぐっと減るなら、高くないと考えています。

逆に言えば、無料プランのまま業務に使い続けるのが一番リスクが高い。コストを抑えたつもりが、セキュリティリスクを抱えている。ここは「安心を買う」という発想に切り替えたほうがいいと考えています。

「正しく怖がる」ことが、最初の一歩

で、振り返ると、やることは3つだけだった。

  • ステップ1: AIの設定を変える(学習オフ)
  • ステップ2: 入力ルールを決める(3段階分類)
  • ステップ3: 企業向けプランに切り替える(月1,600円〜)

「怖いから使わない」は、一見安全に見えます。でも実際には、従業員がシャドーAIで個人アカウントを使い始めるリスクがある。禁止するだけでは、かえって危険な状態を招きかねない。

「怖いから対策する」に切り替えれば、安心してAIを試せるようになります😊 そこからはじめて、日々の業務の中で「この面倒な作業、AIに任せられないかな」と考えるフェーズに進める。

3ステップを終えたら、次は「お困りごとにAIを当て込む」番です。


はじめの一歩 の記事はこちらにまとめています。